今年は日タイ修好130年という節目の年に当たるそうで、それを記念して、東京国立博物館では「タイ展~仏の国の輝き」が開かれていました。(8月27日で終了)
今回の一番のお目当ては、ウォーキングブッダとして親しまれているスコータイ朝時代の「仏陀遊行像」です。
タイは国民の9割が仏教徒と言われますが、その信仰は、日本での主流である大乗仏教に対して、上座部仏教です。
特に1238年にタイ族が、スコータイ王朝を開いて以来、歴代の王は上座部仏教を大変尊重し、多くの寺院を建立、今日に至っています。
ですが、それ以前の古代においては、実にさまざまな民族・国が存在し、独自の仏教文化が開花したようです。
それを象徴するような「ナーガ上のブッダ座像」・法輪、そしてヒンズー教の両性具有神などを展観していますと、時代はスコータイ朝へ。
そして突然、目の前に軽やかな足取りの「仏陀遊行像」が現れて驚きました。
それは、予想をはるかに上回り、ウォーキングブッダと言うよりも、ダンシング、もしくはフローティングブッダとでも呼びたいような軽やかさです。
現在の日本の寺院などに見られる、堂宇の奥深く尊厳をもって端坐もしくは起立する仏像とはかけ離れています。
もちろんスコータイ朝の座像のブッダも展示されていて、そのお顔はウォーキングブッダと共に、面長で優しい笑みを浮かべているようです。
この展覧会でもう一つ忘れてはならないのが、アユタヤ朝(14世紀中~18世紀中)の黄金の仏舎利や王冠と共に、現ラタナコーシン朝のワット・スタット寺院のラーマ二世王作の大扉です。(ここは写真撮影許可でした)
ワット・スタットは1807年に創建された、タイ王室第一級寺院で、その寺院の正面の大扉は、ラーマ国王二世自ら彫刻を施したということです。
しかし1959年の火災で一部焼失したのですが、2013年より日タイで修復作業を行ったとのことでまさに日タイの友好の象徴の一例です。
さて展覧会を通じて印象的だったのは、スコータイのウォーキングブッダの親しみ安さです。
タイで仏教が人々に寄り添ったものであることをまざまざと感じました。
ちょうど夕日色にライトアップされて美しい本館を眺めながら、上座部仏教と大乗仏教の現状にも思いを馳せたことです。
小日向 本法寺サイト担当 白椿(しろつばき)