立春を過ぎてから、気温の起伏が多い日を繰り返しておりましたが、今日は関東と東北でとうとう春一番が吹いております。
そんな中、今週は紀尾井ホール(小)での「午後の演奏会 花鳥風月-花-」と題した邦楽演奏会に出かけてまいりました。
演奏会の一曲目は長唄で「京鹿子娘道成寺」(きょうがのこむすめどうじょうじ)。
いわゆる道成寺ものですが、安珍・清姫伝説のアナザーストーリーとでもいうのでしょうか。
~時は春。
舞台は清姫の大蛇に鐘を焼かれてから女人禁制となった紀州道成寺。
そこにひとりの白拍子が、鐘を見せてほしいと現れます。そのあまりの美しさに、禁制も忘れて僧侶は入山を許してしまいます、舞を舞いながら鐘に近づく白拍子が、実は清姫の化身と気づいた頃には、すでに時遅し~という物語ですが、その詞章(歌詞)の冒頭は、
「鐘に恨みは数々ござる
初夜の鐘を撞くときは諸行無常と響くなり
後夜の鐘を撞くときは是生滅法と響くなり
晨朝の響きは生滅滅巳、
入相は寂滅為楽と響くなり、
聞いて驚く人もなし。
我も五障の雲晴れて真如の月を眺め明かさん。」
というもので、詞章(歌詞)中の
『諸行無常 是生滅法 消滅滅巳 寂滅為楽』
はみな涅槃経が出典。
それはまた三法印といわれる『諸行無常 諸法無我 涅槃寂静 』という仏教の基本スタンスを表すものでもあります。
今回改めて、歌舞伎舞踊という娯楽のための音楽にこんなにも仏教の思想がちりばめられていたことに感慨を覚えました。(続く)
小日向 本法寺サイト担当 白椿(しろつばき)